被爆者の声398

<body><a href="../index.html">HOME</a><br><table summary="証言375"><tr><td class="testi">証言375</td><td class="date">8月6日　直後</td><td class="i_midasi">影響受けた書物だったんですが…</td><td class="age">当時17歳</td></tr></table><div class="large">出ようとしたときに、足の太もものところを柱が、<br>上から落ちてきた柱が押さえてまして、その上へ、<br>ずーっと重なってたもんですから、下が出ないわけですね、足が。<br>それで『助けてくれーっ』て怒鳴ってましたら、はるか向こうのほうから<br>妹が『お兄ちゃん、お兄ちゃん』言うて捜してるわけです。<br>そうしてるうちにだんだん妹が上から<br>『お兄ちゃん、もう回りが火が出だした』て言うたと<span class="small">（言ったんです）</span>。<br><br>私が下敷きになってもがいてる時にね、ちょうど目の前にいっぱい、<br>本箱にあった本が散らばってたわけです。<br>当時私、<ruby>武者小路<rp>〈<rt>むしゃのこうじ<rp>〉</ruby><ruby>実篤<rp>〈<rt>さねあつ<rp>〉</ruby>の『人生論』というのが岩波新書にありますよ。<br>あれを中学の4年生の頃かなんかに読んで、ちょっと感激しましてね。<br>ちょっと影響受けた書物だったんです、当時の。<br><br>ところが岩波新書の<ruby>武者小路<rp>〈<rt>むしゃのこうじ<rp>〉</ruby>さんの『人生論』なんていうのがね、<br>目の前にあるわけです。<br>目の前にあってね、しかし私が生きるために<br>何にも役に立たんわけでしょ。<br>本だ、書物読むだ、なんだ言ってて、<br>そのことは私自身が非常に大切だと思ってたんやけども、<br>私が生きる時にね、いったい何の役に立つんやろうか。<br>ニヒルなんていうたらちょっとええカッコするようですけどもね、<br>なんかそんなものがねー。</div></body>