医務室から帰って来る時、初めて薄目を開けたら、
目が見えるんですね。私の目が。
そいで、なんのことはない、
学校の廊下をずーっと歩いていたところが、
学校の廊下にかがみがあったわけですよ。
かがみってことに気が付かないで、
ずいぶん向こうからひどい人が来るなあと、私も見たわけなんです。
したらその、向こうから来るんじゃなくて、自分なんですよそれが。
そいでねびっくりしてですね、これが自分かと。

いやもう、眉毛まゆげは無くなっちゃっているし、
耳からですね、耳の柔らかい所が全部もう、
まん丸になっちゃてるんですから、パンパンになってるんです。
それでそれに、かさぶたを取って、油を塗ってるもんですから、
赤膚あかはだの出た、いやもう、本当にね見られない状態でしたね。

それでその時に、私たちよりも傷の軽い人たちがですね、
起きて食事の世話だとか、その辺、いたり
片付けたりしてくれた、戦友が何人かいるわけですよ。
そうしますとね、そういう世話をしてくれた人がね、
翌日になると毛布が起きないんです。もうこの世の人じゃないんですよ。
傷の軽い人ほどそういう、結局見るに見かねて、
自分たちでそういう世話をしてくれたんですけども、
それが結果的には、その翌日はなくなっていると。

それが一人だけなら「あの人は」ていう風にいいましたけれど、
日を追って、今日もだ、今日もだといって、それで私も…



HOME