鏡をですね、拾って見た瞬間が絶望的なんですね。 もう目が両方下のほうに下がっているんですよ、瞼〈が。 まあ、狐みたいな顔になってしまいましてね。 そいでですね。見た瞬間、私、鏡〈の切れっぱしを 「ポーン」って捨てたんですよ。 まあ誰もそうだったでしょうけどね。自分がこれだけ傷を負〈って、 顔の傷をね、世の中にこれから先、本当、 晒〈していかんばならんという絶望感ですね、
24歳で、原爆を受けた当時は、花の盛りだったもんですからね。 まあ、人並みにあったかは分〈かりませんけど、 自分では、まあ人並みにあったろうって、誇りを持っておったんですよ。 それがもう、一瞬にしてそんなしてもう、まあ不具者になったわけでね。
もう、薄い信仰でありながらもですね、 あー本当ね、これを奉〈げなければね、 なんかのやっぱり自分にも、償〈いがあったのじゃないかね これを耐えて行かねばならん自分の、神の摂理〈やと、 思〈し召〈しだったということもありましてですね。
まあ、奉〈げるもののですね、やっぱり人間の弱さ、 やっぱし夜になれば、しくしく泣くことも何回かありました。 摂理:神が人の利益を慮〈って世の事すべてを導き治めること |