それでも何とか一命をとり止めるようになりまして。 『鏡を見せて欲しい』って言いましても、 『壊れて、無い』って言うんですよね。
それで、段々よくなりまして、家族のスキをみて、 起き上がってみたんですけど、 あのー、そのね鏡台〈なんか壊れて無いって言うのに、 デーンって、姿見ですから、割りと大きいんですよね、 座ってるんですよね。 きちっと鏡台〈掛けも掛〈かっているんです。 なんだ、あるのにと思って、私思って、 這〈ってその鏡台〈掛けをはぐった(外した)んですよね。 そうしますと、なるほど3分の1ぐらい残ってるんです。 で私を映すのには十分残ってますのでね。
初めて自分を映して見たんですけど、 まあ、当分信じられませんでした。で、ま、いくら見つめていましてもね。 昭和20年の8月6日の8時15分までの、 本当の姿を再び見出せることは出来ませんでした。
国のために良かれと、皆が尽くしたその結果がですね、 現実の自分になろうとは、 疑ってもいませんでしたのでね、本当に大きなショックでした。
まして、女から美を奪われるということは、 「死」にも等しいものだということを、 少女時代から青春時代を迎える頃に、非常に苦悩しました。 |