被爆者の声346

<body><a href="../index.html">HOME</a><br><table summary="証言324"><tr><td class="testi">証言324</td><td class="date">8月9～10日</td><td class="i_midasi">ようよう赤ん坊だけは洗ろうて</td><td class="age">当時52歳</td></tr></table><div class="large">子供が生まれるけ、来てくれ言うて呼びに来ますでしょう。<br>どこで生まれるか言うたら、<br>今の<ruby>鶴見町<rp>〈<rt>つるみちょう<rp>〉</ruby>の焼け跡に居るんじゃ、言いますけ。<br><br>いうた所が、行くだけのことで、<br>消毒薬がひとつあるわけじゃございません、<br><ruby>鋏<rp>〈<rt>はさみ<rp>〉</ruby>一丁あるわけじゃなし、糸がひとつあるわけじゃなし、<br>もうなんにも、綿もなんにもないんですからね。<br>風を防ぐために、屋根に<ruby>筵<rp>〈<rt>むしろ<rp>〉</ruby>みたいなものがあって、そこでですけんね。<br>どうにもなりませんですよね。<br><br>まあ、ほんの行って<ruby>介添<rp>〈<rt>かいぞ<rp>〉</ruby>えするだけのことです。<br>そして、介助してあげて、バケツの焼けただれやなんかでお湯沸かして、<br>そして、ようよう赤ん坊だけは洗ろうてあげたんですけど、<br>あとの消毒することも、どうすることも出来ませんで。<br>そいじゃ人間というのはああいう時は病気も起こらないもんです。</div></body>