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証言300 | 8月16日以降 | 微かな声で呼び合いながら | 当時26歳 |
同じ病舎の中に入れておきながら
親娘〈が入っているということはどっちも知らない。
で、私たちも知らなかったわけ。
そいで、それが偶然同じ私の方の
8病棟に居ると(おると)いうことが解りまして、
そいじゃ、これは親娘〈じゃないかということで、
まあ、二人とも非常に重傷でしたが、もんですからね。
すぐに、あの、ベッドを入れ替えさせましてね、
隣同士にベッドを替えてあげたんですよ。
ところがベッドが隣同士に来ましてもね、
もう、とにかくそりゃ酷〈い状態で、もう、手は、もう殆〈ど火傷〈でね。
その娘さんと隣同士に寝て、休んでおっても手も握れない。
娘さんが先に亡くなったと私は記憶しとるんですが、
えー『お母さん』、『ひで子』ちって両方から、
それこそ微かな声で呼び合いながら亡くなっていくんですよ。
あーもう、…… あの姿を思い出すとね、
今でももう胸いっぱいになってくるような感じですね。
そして、その夜だったでしょうかね、
あの、お母さんも亡くなりましたけども。
まもなくその後を追うようにしてお母さんも亡くなるんですよ。