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証言297 | 8月16日以降 | 医学が全然太刀打ちが出来ない | 当時24歳 |
救護活動と治療をしようというにも治療〈材料もないもんだから、
とにかく収容〈して新興善〈小学校の1階、2階に
患者さんを寝せとっただけですね。
何の治療〈材料も無いわけなんですから。
で、完全に衣服を着てる人なんか殆〈ど無い。
とにかく覆〈ってるガーゼとかシャツとかそんなふうな物を取ると、
皮がそれについてベロッと剥〈げてくるようなものですからね。
顔に布(きれ)を当てておるでしょ。その布を剥〈ぐと
鼻がピッと取れてくるし、耳がポロッと取れてくるんですからね。
目を押さえとるガーゼを取ると目が出てくるんですから、目の玉が。
で、暫〈くすると全部死亡ですね。
で、一番もう私が残念に思ったのは、
もう鼻血を止めきらないわけなんですね。
出血が止まらないわけなんです。
というのは、その時にはまだ解らなかったんですけど、
骨髄〈の破壊によっての止血機能そのものが
壊れてしまっとるわけですから、止まるはずがないんですよ。
だから、それまでに軍医〈学校で止血にはどうしたらいい、
こうしたらいいということを習ってきとったけど、
それをしとっても殆〈ど役に立たないわけなんですね。
どうしても鼻血が出だしたらもう、
その翌々日ぐらいには必ず死亡してましたですね。
もう、情〈けないなと思いました。
その今まで習ってきた医学がこれには全然太刀打ちが
出来ないということをつくづく思いましたですね。
受け付けた時に住所とか名前とかそんなの全然解らないし、
遺族の方々が受け取りに来るという可能性も無いもんですから。
新興善〈小学校の運動場の隅に井桁〈に死体を重ねてですね、
そしてガソリンをぶっかけて焼いたわけなんです。
ほんっとに申し訳〈ないと思うんですけどね、
どうにもこうにもその時点においては
仕方なかったわけなんですね。
新興善〈小学校の中にそのまま遺体を置いておいても
今度は後から後から入ってくる人が収容〈がされない。