身体にぜんぜん、あのう、火傷かしょうもない、
ところが開けてみると脾臓ひぞうはほんとにくにゃーっとなっとる。
ようするに萎縮いしゅくしておりますね、肝臓かんぞう萎縮いしゅくしとる。
それから骨髄こつずいでもどろーっとした泥のような泥状のね、
当時、初めは黄色髄おうしょくずいの、黄色髄おうしょくずいというよりもどろどろですよね。
そういうふうな造血ぞうけつ臓器に非常な変化がきとると。

まあ、そういうことから考えるとね、放射能によるものに間違いないと。
顕微鏡的にはね、毛はあるんですよ。
まあ肉眼でも毛があるんです。
ところがね、毛根がやられとるんです、もう既に。
毛根がやられとることと汗腺、
汗の出るね、あれ、みなやられとるんですよ。
表面から見てもわかんないです、火傷やけどがなくっても。

それから、まあ、あの、睾丸こうがんのですね、睾丸こうがんの、
あのほんとならひっぱれば糸のように引くですがね、
粘着性があって、そういうものもない。
ようするに萎縮してしもうとるんですよね。

したがって、あの当時熱が出て、そして下痢をするというのが、
その後すぐおこりましたからね。
汗が出ない、普通熱が高く出ると汗をかいて熱がちっとでも下がる。
汗を出そうにも汗腺がやられとるですよね、それが中間期になってくる。
それからだんだん脾臓ひぞうがむしろ逆に大きくなってくる、赤くね。
それから骨髄こつずいでもどろどろのようなんがむしろ、
あの、大人になると普通黄色髄おうしょくずいになるんですが、
黄色髄おうしょくずいどろどろのようになっとる。

それが中間期以降になると赤色髄せきしょくずいになると、
ようするにそこまで生きた人はなんとかあの造血ぞうけつ機能を発揮しよる。
それが逆に今度は白血病的に白血球がどんどん増えるというような、
まあ時期によってうーんと。

急性原爆症解剖症例(「ながさき・原爆の記録」/長崎市 刊より) 

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