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16日に子供が亡くなりまして、防空壕の中でね。
主人がそれこそ蜜柑箱〈ひらってきましてね。
そしてそこに寝かせてっていって、そして二人で一生懸命〈
お経を上げて、そして主人がそれをこう抱〈えて出ましてね。
もう今から火葬してくるっていって出かけて行きますのが、
私がまだ死んだばかりでしょ。
何かこう『ちょっと待って下さい』って言うて
『火葬するってのちょっと待って下さい』っていうような気がして。
箱にちょっと従〈いて行きたくて立ち上がったんです。
そうしたら自分が歩けたわけですね。
歩けないとばっかり思っておりましたのに。
やっぱり、こう、あっ、自分が歩けるんだと思うて。
そして、その時に出て暫〈くして主人がこうしてまだ熱い遺骨〈を
それこそ掌〈に持ってきましてね『焼いてきたぞ』言うてから
『はぁ、そうですか』言うて、
『これだけになったんですか』いうようなことで。