(道で呼び止められ、)『看護婦さん、あんた、何処行かれたんですか』。 『私は西町〈まで遺骨〈ひらいに行って、今から本部へ帰るとこですが』。 『あー、今、なんですの、重大放送がありまして、聴かれましたか』。 『いいえ、私、聴かんかったですが、もうそんな時間でしょうよね、 あるいうことでしたが』。 『聴きましたが、どうも雑音がはあって(入って)、どうもようわからんが、 何でしょうて、戦争もこれまででしょうて』。 『ほいじゃ、勝ったんですか負けたんですか』言うたら、 『わかりませんわい』って言うとったんですよね。
勝ったのも半信〈、負けたのも半信〈。 私、本部に帰りまして『ただいま帰りました』って言うたら 『あんた戻ったんか。今、重大放送があってのぅ、 院長以下みんな泣いたとこよ』いうてね、言われたんですわ。 『ありゃ、そうですか』 もう気が抜けたようになって、何にもしたくないようになりましてね。 『まあ、そうですか』言うたぎり、もう言葉が無かったです。 それが8月の15日の1時か2時頃だったでしょうかね。暑い盛りですよ。 カッカッカッカッ陽が照ってね。 |