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証言257 | 8月15日以前 | 死体のね、口を開けて歩きました | 当時44歳 |
もう、たくさんの死体がある訳で御座〈いますよね。
男か女か分〈かりませんのよ、髪の毛も燃えてね。
そして裸なんで御座〈いますよ。
裸で出ている訳〈じゃないけど、燃えてるんですよ。
私の子供がね、特徴っていいますと、歯並〈びがちょっとここがね、
前歯がちょっとこう、こんな風な歯並〈びだったんです。
その歯並〈びと、そいから、このね、骨盤〈とがね、
まだその、娘で、幼いからで御座〈いましょうね、
ひとつもこの骨盤〈が張ってなかった。それを目当てだったんです。
それだけが目当てだもんで御座〈いますから、
口の中をみんなこう開けて歩きました。
そいでそれに、奥歯に治療〈しかけた虫歯が御座〈いましてね、
それだけが目当てで。
それでその、死体のね、あの、口を開けて歩きました。
私はこんな風で、怖がり坊で、
死体なんか扱う(さわる。いじる)のは怖いので御座〈いますけど、
やっぱ、身勝手なもんで、その時は怖くなくって、
どなたの死体に構わず、もう、見て歩きましてね。
まだ生きている方も御座〈いましたけどね。
どうしてあげようもないとで御座〈います、私には。
それにもう、自分の子を探そうという気の方が先に立ちましてね。
もう、一分間でも早く探して、何とかしてやりたいもんで御座〈いますから。
もう、悪いけども、もう死体は踏み越えるようにして。
学校の校庭は、いっぱい死んどりましたからね。
それを踏み越えるようにして、乗り越えるようにして、
口をこう開けて歩きましてね。