ちょうど4日なってでも、ナ、死んだ死骸はそのまま。 今度、真っ黒焦〈げに焼けた人がョ、 その、炎天下〈に座って身動きができん訳〈やナ、 ただ、目と歯だけが白うしとっと、後は黒うなっとっと。 そういう人が道路脇〈に座って、 通行人をギョロギョロ見とるけど、 自分たちはそれを、どうという気にはならなかったな。
ただもぅ自分の、目的を達する、 ただ自分の「甥〈」を探すという気以外なにもない。 「可哀想〈な」という気も起きらんやったもん。 えぇ、そんなもんだった。
そいでこの、まぁ、一番悲惨〈なのはナ、 家族6名か、母親、大きな材木の下に下敷きになって、 子供はちりじりバラバラ、手を拡げたり、 お母さんの方に手を差し伸べとったんでしょうね。 そんなして、一家ぜんぶ死んどったよナ。 で、まぁ、主人はどうなっとっとっか知らんけども、 たとえ4日なってでも、そのままだった。
えぇ、木の枝に引っかかって死んだそのまま。死んだ死骸〈そのまま、……。 腰掛けに腰掛けたまま、なんか重たい物、落ちてきて、腰掛けたまま、 こぅしたまま、死んだまま、腐〈とっと人間、汁流れよったもん。
防空壕〈から10名位はもう、引っぱり出して、担架に乗せて出したよな、 「甥〈」がそういうところに入っとって死んどりゃせんかい、思うてな。 もうその時ナ、手を握れば、手の首なんかもう、 腐〈りかけ、腐〈って腫〈れとったもんな。 防空壕〈の中入っとってでも効果なかっじゃけん(ないんだから)、 原子爆弾っていうのは… |