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証言254 | 8月12日頃? | 横っ腹から赤ん坊のひっと出で | 当時44歳 |
あの辺はもう死人のコロコロコロコロでしょ。
死人の間ばこうして道ば頼って下って来たっですもん。
『もうおじさん、もぅ下らずにおろうか。ああた方に怪我させたらね、
まぁだ飛行機が来るから、申し訳〈んなかけん』て、私が言うたらですね、
『ここまで来てから親父〈の姿ば見つけずにどうするか』って、
おじさんの言いなさったけん、
『でもねぇ、おじさんたち怪我〈させたら申し訳〈んなか。
もう、とても父ちゃん生きとらんですよ、この姿ば見たら』って、
言うたですけど。
みんな親戚〈の人が『もう行て見にゃでけん』て言うて
連れて来てくれらしたもんですから、
あの天主堂〈の下さん通って来たとですよ。
もうあの辺ば通っときはもう、足は熱かとですもん。
もう足は持ち上げてさるく(歩く)ごたっとです。
瓦〈は焼けて。道って無いですもんねえ。
もう通るところ、通るところ死人のコロコロコロコロですもん。
木の下におっしゃがれておっとば(押し潰させているのを)、
助くっ者はおらんとですもん、助くってしたっちゃ(助けようとしても)、
またあげきらんとですもんねぇ。ほんとですね。
ほして、あの松山橋〈ば渡ってから見たら、
あそこに川は死人で水は見えませんと。
人間のふくれて。もう人間だけですもん、もうその水の中は、浮いて。
そしてそれば、『あらー』って言いながらこう来て、
あん橋ば渡って来たところが、奥さんのここの横っ腹から
赤ん坊の、もう奥さんが焼けたもんだから
ここからひっと出で(飛び出て)ですよ、そして奥さんは転んでこう
焼けてしもうて焦〈がれて、そんなとももう、涙も何も出んとですよ。