ちょうど駅前に行った時分にまた空襲〈、 あれは偵察〈飛行やったんでしょうかね。 それがね、いたずらかなんか知らんが、 機関銃でババァーとやるわけですね。 まあ、防空壕〈に逃げ込んだわけですが。 それはまぁ、すぐもう飛んで行ってしまったわけです。 自分が出る時に足元を見たら、何と死体の上にね、私らは座って、 かごんどった(しゃがんでいた)というようなことでですね。 『ありゃ、ここに、こら、死人ばい』というようなことですね。 もう何にも感じないですね。
ただ学校のことだけ気になるんですよ、奇妙〈に。それから大学病院に行った。 そうしたら結局病院だもんだから、そこにいっぱい逃げて来てるんですなぁ、 どうかしてもらおうと思って。 廊下を歩くと『学生さん、学生さん』と、 私らの足を引っ張るわけですね、もう、いっぱい寝とる人たちが。 それでその、『水くれ』とかなんか言うんだけど、 水も何処〈にあるのかもこっちもわからん。 結局そのままですよ。助けようもない、また助ける方法も分〈かりませんしね。
そして、のろのろと家族の人でしょうかね、死体の口をみんな、開ける。 分〈からんわけですよ、人相がですね、焼け爛〈れとるもんから。 私は初め何をしよるんだろうかと思うとった。 口を開けてですね、歯を調べとるんですね。 それで自分の家族の確認をしとったんじゃないですかね。 あとはみんなゴロゴロ、ゴロゴロ、石ころみたいに死んどるわけですね。 |