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証言248 | 8月10日 夜 | 虫が生きているのに、虫だったら | 当時16歳 |
(見つけて)そしてもう、私達(母と私)、身体を触ってみたら
少しぬくかった(温かかった)からね、
死んだとはわからなかったからですね、その時は。
あぁ、(妹の)まさこちゃんが居ったーっていうんで
『まさこちゃーん』って呼んだんです。
口には黒い斑点が3つ。出血したんでしょうね。唇〈に出てたんです。
寝顔が苦〈しそうな顔してなかったから、
生きてるかも知れんというようなつもりでね。
一生懸命〈呼んだんです。
そうしたら、すぐそばの、杉の木を向こうに挟んだところに、
誰か女の人がまだ生きてあって(居られて)、
その人が『会えてよかったですね』と言われたんです。
『いいえ、死んでます』と言ったら、今までセツコ姉ちゃん、
お母さん二人が来ると思って呼んでたんで…呼んでらっしゃいましたよ…。
ちょうどあの日の晩は三日月、細い三日月だったんです。
杉の間からそれが見えたんです。そして虫が鳴いたんです。
それが悲しかったんです。虫が生きているのにどうして死んだのかと。
虫だったらよかったねえと、また話したんです。
(嗚咽〈)…ああ、すみません…(涕泣〈)。