寝てるんですね、その火傷された方は。 そいでもう、本当に黒人といっしょで、もう真っ黒なんですよ。 それで、髪はちりじりになってしまっているしですね。 それじゃ、『お母さん足を抱〈えてください』。 それで、娘さんには『お腹〈んところを抱〈えてください、 私は頭を抱〈えますから』と言って…。頭を持ったとたんに、 皮がつるっと剥〈けるんですね。
またもう、学校まで行く道にはもう、とにかく地獄の中というのですかねえ、 あれだけの人が道にずっと倒れているところを通るともう、『水、水…』という、 ただその言葉だけで足を捉まえて離さないんですよ、水をくれ…。 ちょうどあそこの川を渡る時は、川の上には人間が重なり、上にもう重なりで。 結局、動物も人間も死ぬ場所はいっしょなんですよね。 結局人間の上に豚が押しかかってみたり、牛馬が押しかかってみたり。 その上にまた人間が押しかかってみたりというような状態で。 もう一緒なんですよ。
私がいちばん、恐ろしくもあったし不思議に思ったのは、 立って死んでいた方がおったんですよ。あれだけ爆風〈があって、 なぜ立って死んでいたかと。立って死んでいた方が、立ったまま、結局…、 舌が膨張〈して、ガムの風船を膨〈らましたような 格好になっているんですね、口は。 目は潰〈れたみたいになって塞〈がっているんですけどね。 橋が半分に折れてですね、欄干〈の上に人間が、四つん這〈いになって そのまま死んでいるし、 『ちょっと絵で描いてくれ、当時の状況をそのまま話してくれ』と言われましても なかなか口に出して話すということは難しいです。 |