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証言228 | 8月10日 午前4〜5時 | この両手を、今でも見つめる時がある | 当時17歳 |
夏のことですし、朝、夜が明けるかあけないか、
ですから4時か5時には山を降りたんだろうと思います。
目指す岡町のところまで来た訳〈ですが、
電車は吹き飛ばされているは、むごたらしい残骸を晒〈しておりました。
それから、やはり家の外に倒れている方が沢山〈居られたような気がします。
で、めざす私の家にやっとたどり着〈きました。
と申しますのは、目印がないもんですから、と同時に道がないもんですから、
本当に十数年間、そこで生活しておったんですけど、ちょっと戸惑うというか、
家を探すような格好だったんです。誰もいませんでした。
もちろん亡くなられた方がいっぱいそこに倒れているのですが、
生きている人がひとりもいないんです。
そして、この、私のこの両手で白骨〈になっておられる方々の頭蓋骨〈をですね、
両手で持ち上げましてね。お袋は金歯が多かったんですねー、
ですから、金歯を目印でやったらいいんじゃないかと思いましてね、
この両手を、今でも見つめる時があるんですけどね、
この両手で何十となく、遺骨〈というか頭蓋骨〈をですね、抱き上げるというか、
そして歯を見る。そして、これじゃないなと思っては元へそっと戻す。