被爆者の声237

<body><a href="../index.html">HOME</a><br><table summary="証言221"><tr><td class="testi">証言221</td><td class="date">8月9日　夜</td><td class="i_midasi">ゴロゴロっていうて、もうそれまで</td><td class="age">当時47歳</td></tr></table><table summary="背景画像あり"><tr><td class="bg" background="../photo/img305.jpg"><div class="large">みんなもう座り込んで<br>『おじさん、水くれ、水くれ』って言うけれども、<br>医者に『水やったらどうですか？』って言ったら<br>『水やったらだめ、死ぬから水やるな』こう言うけぇ、<br>まあよし、『あとから水やるから、頑張っときなさい』と言うて、<br>まあ、激励はしておるけれども、手を合わして<br>『もうおじさん、死んでもいいから、水くれ』とこう言うもんじゃから、<br>それで医者に『どうしましょうか？』って言うて、<br>『もう、そんならやんなさい』と。<br><br>なにも入れもんがないもんですから、手にすくうて来て飲ますと、<br>ゴロゴロっていうては、カタッと死ぬるですね。<br>一人ひとりが飲ましたら死んでしまう。<br>そいけん『飲んだら死ぬるから、<br>今このように死ぬるから飲みなさんな』言うても、<br>もう焼けるようにあるって言うの、<ruby>喉<rp>〈<rt>のど<rp>〉</ruby>がね。<br>『死んでもいいから、水ください。もう<ruby>堪<rp>〈<rt>こら<rp>〉</ruby>えきらん』と。<br><br>こう言うもんじゃから私も、<br>いちいち医者に聞くちゅうのもあれやもんやからもう、<br><ruby>可哀想<rp>〈<rt>かわいそう<rp>〉</ruby>なと思うてですね、手の腹へすくうて来ちゃ、こう飲ましてやる。<br>すると、ゴロゴロっていうて、ひっくり返ったらもうそれまでになる。<br>それがもう、何十人やら<ruby>分<rp>〈<rt>わ<rp>〉</ruby>からんです。<br><br>そいで、今の横穴の<ruby>防空壕<rp>〈<rt>ぼうくうごう<rp>〉</ruby>に50人しか入れない奴が、<br>50人や100人じゃないですよ、<br>みんな積み重なって入っとる<ruby>訳<rp>〈<rt>わけ<rp>〉</ruby>ですんでね。<br>そして、もう『殺してくれ』とおらむ者もあれば、悲壮な声を上げてですね。<br>医者に『何とか注射でもしてやってくれ』言うけれども、<br>応急手当の処置がないちゅうですもんね。<br>もう、あくる朝、起きてみりゃほとんどが死んでしもうとるんですね。</div></td></tr></table></body>