防空壕ぼうくうごうの中は、焼けただれた人が、いっぱいですよね。
それで、もう目は飛び出てるわ、舌は出てるわ、
はらわたはぐしゃぐしゃになって飛び出てるわ、
ちょうは出てるわ、の人達がたくさん入ってるわけです。
『ター坊、ター坊』ちゅうて探すんですけど、ター坊は居ないわけです。

ほしたら、うんうんうなっているわけですね。畳の下敷きになって、
その上に、大きな人達がみんな座ってるわけですよ。
『うわ、この下に子供がおるからのけて下さい、
のけて下さい』って頼むんですけどね、
その人達も全然動ききらないわけね。もう火傷やけどした人とか、
目は飛び出てるわ、髪の毛は全然ない人たちばっかりですから。
で、のけきらないのを、やっとのけてもらって、引っぱり出した時、
もう死んでるんじゃないかと思うぐらい、
その子はぺちゃんこになってたわけですよ。

それでその、防空壕ぼうくうごうの中は、
死骸しがいと焼けただれた人達と、男か女か全然からないんですね。
真っ裸になっている人たちなんか、
おしあいへしあい身動きできないわけですよ。

そうすると日が暮れてくる、すると防空壕ぼうくうごうの中は真っ暗すみですよね、
わかんない、誰が誰やら。とにかく外に出なきゃ、なんか焼けげた臭いと、
もう、生くさい血の臭いで、防空壕ぼうくうごうの中はムンムンしてるわけです。
それで、やっと、とにかく外に出なきゃ、新しい空気を吸わなきゃいけんので、
一人ずつ、みんなかかえてもらって、外に出してもらった。

いったん外に出ると、商業学校がボンボン燃えているわけですよ。
昼間みたいに。
それで燃えてるもんだから、明かりで私達の様子がよくかるんですよね。
大きな音立てて飛行機が、頭すれすれに降りてくるわけですよ。
「バラバラバラバラ」って撃って行くもんだから、
今度は死骸しがいの下に入り込むわけですよ。
死骸しがいの下に入り込んで息を殺して、じーっとしとくわけですね。
それで、飛行機の音がなくなると、また死体からのこのこい出して来るわけ

被爆者の絵・防空壕、壕内の人々、傾いた樹木(犬塚万智子・井上礼子 画/長崎県被爆者手帳友の会 提供) 被爆者の絵・防空壕内の負傷者とランプの光(長崎原爆資料館 所蔵) 

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