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証言219 | 8月9日 夕〜夜 | 撃って行くもんだから、今度は死骸の下に入り込む | 当時10歳 |
防空壕の中は、焼け爛〈れた人が、いっぱいですよね。
それで、もう目は飛び出てるわ、舌は出てるわ、
はらわたはぐしゃぐしゃになって飛び出てるわ、
腸〈は出てるわ、の人達がたくさん入ってる訳〈です。
『ター坊、ター坊』ちゅうて探すんですけど、ター坊は居ない訳〈です。
ほしたら、うんうん唸〈っている訳〈ですね。畳の下敷きになって、
その上に、大きな人達がみんな座ってる訳〈ですよ。
『うわ、この下に子供がおるからのけて下さい、
のけて下さい』って頼むんですけどね、
その人達も全然動ききらない訳〈ね。もう火傷〈した人とか、
目は飛び出てるわ、髪の毛は全然ない人たちばっかりですから。
で、のけきらないのを、やっとのけてもらって、引っぱり出した時、
もう死んでるんじゃないかと思うぐらい、
その子はぺちゃんこになってた訳〈ですよ。
それでその、防空壕〈の中は、
死骸〈と焼け爛〈れた人達と、男か女か全然分〈からないんですね。
真っ裸になっている人たちなんか、
おしあいへしあい身動きできない訳〈ですよ。
そうすると日が暮れてくる、すると防空壕〈の中は真っ暗すみですよね、
わかんない、誰が誰やら。とにかく外に出なきゃ、なんか焼け焦〈げた臭いと、
もう、生くさい血の臭いで、防空壕〈の中はムンムンしてる訳〈です。
それで、やっと、とにかく外に出なきゃ、新しい空気を吸わなきゃいけんので、
一人ずつ、みんな抱〈えて貰〈って、外に出して貰〈った。
いったん外に出ると、商業学校がボンボン燃えている訳〈ですよ。
昼間みたいに。
それで燃えてるもんだから、明かりで私達の様子がよく分〈かるんですよね。
大きな音立てて飛行機が、頭すれすれに降りてくる訳〈ですよ。
「バラバラバラバラ」って撃って行くもんだから、
今度は死骸〈の下に入り込む訳〈ですよ。
死骸〈の下に入り込んで息を殺して、じーっとしとく訳〈ですね。
それで、飛行機の音がなくなると、また死体からのこのこ這〈い出して来る訳〈…