井樋の口いびのくち(現在の銭座町ぜんざまち、あの付近から焼けただれた人が
あっちこっちに見えるし、
電車転覆てんぷくしてるわ、馬車馬ばしゃうまは死んだまま寝てるわ、
人間はゴロゴロですよ。
電車ひっくり返っとるでしょう、みんな電車の中へみんな丸げで、
死んでるでしょう。

行く途中、浦上川うらかみがわを渡ったところが、
川の中にいっぱい人が居るなぁ。
それからもっとね、可哀想かわいそうだと思ったのはね、家がつぶれてるでしょう。
そいでそこからこう、い出したんでしょうね、
い出した人がこんな格好だ、
両手を道路の方にやってね、首はというと、それが焼けただれてしもうて、
こんななってんだなぁ、まっことに可哀想かわいそうだし。

川ではその、盛んに『助けてくれ、助けてくれ』泣きわめくし、
それからその段じゃないもんだから、急いで兵隊を2人、家に行った、
家に行ったらあんたもう、家はペシャンコだ、半分焼けてるもん。
どうにもならないですよ。近所全部そうですからね。

被爆者の絵・横倒しの電車と路上の赤い遺体(長崎原爆資料館 所蔵) 被爆者の絵・川に入っている人々、防火用水にむらがる遺体(長崎原爆資料館 所蔵) 

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