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証言211 | 8月9日 夕刻 | 何千人という老幼男女の呻き声は | 当時29歳 |
大橋に近づいた頃、私達は異様〈な声が集まるのを耳にして、
川の中には、水のある所といわず、ない所といわず、
幼児、男、女、老人の区別なく、
その数は恐〈らく何千人という人たちだったと思います。
その人たちは、付近一帯が一瞬にして焼けたので、逃げ場がないので、
この川に走り込んだものであると、すぐ直観されたわけです。
私は(昭和)12年から15年まで、北支事変〈に現役兵として参加して、
友軍〈が何百人と死傷したことがある。この悲惨〈な光景に何度か遭遇〈したが、
軍人は若者の集まりばかりで、まして自分自身もいつ死ぬかわからんと、
覚悟をしていたので、次は自分の番かと思うくらいであったが、
この状況はどうだろう。
重傷の何千人という老幼男女の呻〈き声は、
なんと表現していいか、表現はとてもできません。
私は、地獄という言葉を子供の頃から聞いていた訳〈ですが、
しかし戦地〈にいるときは、地獄とまでは感じませんでしたけど、
この光景を見てその時、これが本当のこの世の地獄と思って…。