HOME
証言210 | 8月9日 16時以降 | とにかく阿鼻叫喚 | 当時36歳 |
全然、家は一軒もないんですから、長崎駅から向こうには。
それでその、点々、点々として、篝火みたいなことで、
ずーっと燃えてるんですね。その中をこう、
這〈うようにして目的地に向かって進んだ訳〈です。
今度は、向こうの大橋〈の方面からですね、
怪我〈をしてこちらの長崎駅の方へ向かって避難〈する人。
「下の川〈」の橋の下からですね、若い人の声で、今も耳に残っとるんですが、
『助けてくれ、助けてくれ』という声がする訳〈ですね。
しかしこれも、いかんともせぬ、もう施しようがない。
今度、今の市民運動場ですか、あそこんところへ行ってみたところが、
山里〈方面、城山〈方面から避難〈者で、が、あそこに集まりましてね、
子が親を呼び、親が子を呼ぶ、とにかく阿鼻叫喚〈。
たまたま、親が子を発見すると、無事を喜んで、そして抱き合って、
そこで泣き叫〈ぶんですね、そうすると今度は、そうするうちに、
死体を見いだしたお母さんなんかっていうのは、
その死体に取りすがって泣くというような状態。
そうすると今度は、重傷を負〈うた人が、歩けないのでもうとにかく
芋虫〈みたいに這〈うてですね、そして生き延びんとする姿ですね。
実にこれは、なんと言いますかな、その、話と言っても話せない、
本当に、もうこの上もない、行ったことはないんだけども、
地獄というものがあれば、
こんなもんじゃなかろうかと思うですね。
とにかくその惨状〈というものがですね、