第1便の、そのトラックが入ってきた時にね、
これで戦争は終わったなと思いましたよ。
これだけ人間を痛めつけた武器があってね、
これをなお続行しようという軍部があるなら、これはもうきちがいだと。

大部分の者は、頭の毛は全部焼けちぢれてね、
そしてもちろん着物はボロボロ、
血にまみれて、みんな火傷やけどしているわけですね。
露出部分に、火傷やけどしている部分なんかにガラスの破片とか、木の破片、
あるいは鉄片。そういう物が突き刺さっているわけです。

いまは、ああいう塀が少なくなったけど、
よく塀の上にビールびんだのガラスを割ったのを
泥棒けに付けてるのがあるでしょ。あれですよ。
あれが人間の身体に起きているわけですね。
肺の中にガラス片がたくさん飛び込んでてね、
聴診器当てなくても、呼吸こきゅうする度にジリジリジャリジャリ、
そのガラス片がぶつかり合う音がね、そういう患者さんが沢山たくさんいましたよね。

耳そのものを胸につけて、心音を聞いたりして、
心臓が動いているのかどうか、
そういうことを区分けしながらやっていったわけですけどね。

例えば、軽い木の枝とか葉っぱなんてのは、相当爆風ばくふうを与えてもね、
それが突き刺さるということはちょっと考えられないでしょ。
それが、小枝のような物が頭蓋骨ずがいこつを突き刺してね、
婦人のほら、装飾品みたいに、髪の上にポーンとそれが
突き刺さってるなんていうような、
異常なことがあってね。

被爆者の絵・大村海軍病院での手当て(山本帝子 画/長崎県被爆者手帳友の会 提供) 

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