HOME
証言203 | 8月9日 夜 | 呼吸する度にジリジリジャリジャリ | 当時25歳 |
第1便の、そのトラックが入ってきた時にね、
これで戦争は終わったなと思いましたよ。
これだけ人間を痛めつけた武器があってね、
これをなお続行しようという軍部があるなら、これはもうきちがいだと。
大部分の者は、頭の毛は全部焼け縮れてね、
そしてもちろん着物はボロボロ、
血にまみれて、みんな火傷〈しているわけですね。
露出部分に、火傷〈している部分なんかにガラスの破片とか、木の破片、
あるいは鉄片。そういう物が突き刺さっているわけです。
いまは、ああいう塀が少なくなったけど、
よく塀の上にビール瓶〈だのガラスを割ったのを
泥棒避〈けに付けてるのがあるでしょ。あれですよ。
あれが人間の身体に起きている訳〈ですね。
肺の中にガラス片がたくさん飛び込んでてね、
聴診器当てなくても、呼吸〈する度にジリジリジャリジャリ、
そのガラス片がぶつかり合う音がね、そういう患者さんが沢山〈いましたよね。
耳そのものを胸につけて、心音を聞いたりして、
心臓が動いているのかどうか、
そういうことを区分けしながらやっていった訳〈ですけどね。
例えば、軽い木の枝とか葉っぱなんてのは、相当爆風〈を与えてもね、
それが突き刺さるということはちょっと考えられないでしょ。
それが、小枝のような物が頭蓋骨〈を突き刺してね、
婦人のほら、装飾品みたいに、髪の上にポーンとそれが
突き刺さってるなんていうような、
異常なことがあってね。