しばらくして『おーい
汽車が来たぞー』と言う声が聞こえてきて、
そして、汽車が来たからみんな線路から
外れなさい、
避〈けなさいと言ったけれども、
線路から
避〈けきれる者ばっかしではないわけですよ。
線路の上で死んだようになって、長くなったのも
沢山〈おりますしね。
やっと『乗んなさい』と許可が出て、それで乗ろうとしたところが、
何といってもホームから「ホイ」と汽車乗るようには行かないわけですね。
汽車の踏み台ですね、足が上がらない
訳〈ですよ、下からは、レールからは。
それで、2回ほど、焼け
爛〈れた胸をこすりましてね、
それでも痛いとその時は感じなかった
訳〈ですけど。
やっとデッキに上がってみた
訳〈ですね、そしたら椅子ていう椅子は
全部重傷者が倒れて、座っとるんじゃなくて倒れている
訳〈ですね。
そして通路は泥と血だらけなんですよ。
しばらくしたらボツボツ汽車が出始めまして、
立っているのがとても、その、耐えられないわけですね。
そしてとうとう座ってしまった
訳〈です。その血と泥の中にですね。
ところが座ってることが、今度は段々段々耐えられなくなって、
そしてとうとう横になったわけです。
横になる時には力果ててたのか、顔も
伏〈せた
訳〈ですね。
その時私は生ぬるい血を口の中にくっつけたような、そういう
いやな記憶がですね、いやというほどまだ頭に焼き付いている
訳〈です。