しばらくして『おーい汽車が来たぞー』と言う声が聞こえてきて、
そして、汽車が来たからみんな線路からはずれなさい、
けなさいと言ったけれども、
線路からけきれる者ばっかしではないわけですよ。
線路の上で死んだようになって、長くなったのも沢山たくさんおりますしね。

やっと『乗んなさい』と許可が出て、それで乗ろうとしたところが、
何といってもホームから「ホイ」と汽車乗るようには行かないわけですね。
汽車の踏み台ですね、足が上がらないわけですよ、下からは、レールからは。
それで、2回ほど、焼けただれた胸をこすりましてね、
それでも痛いとその時は感じなかったわけですけど。

やっとデッキに上がってみたわけですね、そしたら椅子ていう椅子は
全部重傷者が倒れて、座っとるんじゃなくて倒れているわけですね。
そして通路は泥と血だらけなんですよ。

しばらくしたらボツボツ汽車が出始めまして、
立っているのがとても、その、耐えられないわけですね。
そしてとうとう座ってしまったわけです。その血と泥の中にですね。
ところが座ってることが、今度は段々段々耐えられなくなって、
そしてとうとう横になったわけです。
横になる時には力果ててたのか、顔もせたわけですね。
その時私は生ぬるい血を口の中にくっつけたような、そういう
いやな記憶がですね、いやというほどまだ頭に焼き付いているわけです。

被爆者の絵・救援列車のいる風景、道ノ尾付近(深堀勝一 画/長崎県被爆者手帳友の会 提供) 被爆者の絵・救援列車がいる風景(深堀勝一 画/長崎県被爆者手帳友の会 提供) 

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