HOME
証言197 | 8月9日 | そういう人を踏み台にして我先に | 当時20歳 |
私達も本当に、乗せるときには見ていて、もどかしいような
気もするわけですよね。
だけど、私たちは機関車から降りられないわけですよ。
だから、機関車の中で左を見、右を見して、うろうろするだけで、ですね。
しかしながら、「犬走り」と列車のデッキといいますか、あれまでは、やっぱ、
こんくらいまでありますですよね、胸位までありますんですから、
なかなか、掴まっても乗り切らないわけです。
特に負傷者が、そういう風に多いもんですから、
力尽〈き果てた人なんかが乗るには、
自分の身体を引き上げきらない訳〈です、自分で。
だから、今度は上から他の人が引っ張ってやろうとするけれども、手が、
皮がべらっと剥〈げてしまって、ぜんぜん握っても力が入らないわけですね。
息絶〈え絶〈えでそこまで来た人は、そこで倒れてしまって
動けないようになってしまう人もかなりあるわけです。
そうしたところが、そういう人を今度は踏み台にしてですね、
結局我先〈にやっぱり乗ろうてする。
のは、やっぱりパニックというのはああいう風に
なるんではなかろうかと思いますよね。
その声も、なんて言いますか、泣き叫〈ぶどころじゃなくて
『ぎゃーぎゃ〜』って言ってね。
本当もう、本当に、あれは死んでからの地獄じゃなくて、
生き地獄ですよね。