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証言196 | 8月9日 12時30分頃 | 座席までご自分で足を運ぶことさえ | 当時34歳 |
機関車乗務員と相談を致し、線路の点検もろくにできないままに、
私が機関車の先頭に立ちまして、列車を誘導し、
汽笛を高らかに吹鳴してもらいながら、
浦上〈の方面に列車を進めましたような次第でございます。
西町〈踏切の手前で列車を止めた訳〈でございますが、
この地点ではもう、沢山〈の負傷者の方がたむろされておられまして、
『助けて助けて』との悲痛な叫〈びが、
どうすることもできない痛々しい姿でありまして。
客車のデッキまでは、かなりの高さでもございますし、
結局乗車される方に、両手を客車のデッキにかけていただきまして、
ほとんど自力でお乗り込みできられます方は、
それこそ僅かな姿でございまして、
あとの大部分の方は、私どもで、お尻を押し上げるとか、
両足をささえて客車のデッキまで押し上げましたような姿でございまして。
列車までたどり着〈けば絶対に助かるとの、強い信念でしょうか、
もう列車のデッキに上がられますと、
客車内の座席までご自分で足を運ぶことさえ
出来られないような、お気の毒な重傷者も
数々居られましたような姿でございまして。
こうした作業の中にも、殆〈ど動けない重傷者の方が、周辺の丘から
あるいは小道の方々から聞こえてまいります、
『助けてくれ、助けてくれ』の声が
随所から起こってくるのでございますが、残念なことに…