HOME
証言192 | 8月9日 | 死体を踏まにゃ、通られんと | 当時20歳 |
中に居るばってん助けきらんとやもんな、自分の身が危なかもん。
そいでもやっぱだいぶん助けたですよ。
物で押されて出えきらんとなんかな、
それで出すでしょ、握るでしょ手ば。
『しっかりせい』て言うて。ここに(自分の手に)くっ付くとやもんな、
ここに手、立派にしとるごとあるばってんな。全部。
そいでもう、触れば触ったところ全部皮剥けてしまいよった。
丸裸やもん、男も女も。見るに見かねてなんかそこあった物で、
板でも何でも。ここだけは隠してやって。
こっちが根気〈負けしたもんな。一人や二人なら話もわかる。
あれだけの人間やからもう足の踏み先もなかぐらいにあっとやもん。
おめくとだけ助けて、あとはどうしようもなかっじゃもんな。
腸〈なんか出とる、目は出てぶら下がっとる…。
夜道を歩くけば、あんたどうかしらんですば(ってん)、あの
蛙〈の太かとのおっでしょうが、あれを踏むとブクってするでしょ。
あんなみたいに、ずーっと死体を踏まにゃ、通られんとやもん。
ああもう、呻〈くとは呻〈く、『助けてくれ』て言うて、
『水の飲みたか』ちゅうともおるしな。…