そしてしばらくして玄関の方へ患者さんを、担架で、 そうですねえ、十往復ぐらいしたでしょうか、 救出したんですけれども。しばらくしまして街を見ますともう、 病院から見渡しますと火の海ですものね。
ずいぶん遅くまで病院の中へ居たわけですけれども、 最後に火が病院にもう移った、と、これでもういよいよ逃げなければ 危険だと、玄関でみんな集まって、それから途中の患者さんを救出しながら、 穴弘法(寺)のすぐ下のほう、ところまで行くんだ、と、いうことで 生き残りの者は一緒に、そこからずうっと、 患者さんを助けながら登って行った訳〈です。
で、途中で、角尾〈学長が、倒れておられた訳〈ですね。そうしますと、 永井〈(隆〈)先生は『ここに学長がおられるから、大学の本部はここだ』と、 『みんな集まれ』というようなことで、大学本部としてのシンボルをそれこそ、 作って立てるんだということで、古い破れたシーツを取り出して、その中に みんなが倒れるようにして、自分の身体に付いている 血液で日の丸を描いた訳〈ですけど。 私もずいぶん付きましたけれども。見る見るうちに、 その日の丸が出来上がりましてね。 それをそこへ高く掲げまして、 『大学本部はここだぞ、学長はここだぞ、 みんな職員は集まれ』というようなことを 永井〈先生が大きな声で叫〈ばれましたんですが。 |