大学病院の裏手の、その小高い丘の上まで逃げまして、 ここまで来ればいいかと思ってひょっと病院の方を見たんです。 その瞬間でした、窓という窓から一斉に火を噴いたんです。 あれは、すぐ火が出るんじゃないんですね。
当時、そうですね、いいおじさんに見えましたから 40か50位の方だったんでしょうか、 お腹が切れちゃってるんです。かなり深く。 両手のひらで腸が外へ出てくるのを押さえてんです。 その指の間から腸〈が出てくるんですね〜。 手をこう、交互に上下しながら盛んにそれを押さえて 蹲〈っていた方がありましたねえ。
それとですね、下級生です。商業(学校)の。 1年生かせいぜい2年生ですか、当時学校へ行ってた子は。 窓枠、サッシというのは怖いもんです。 あれが爆風〈でしょうね、飛んで来まして、 腹から背中へ貫通〈…じゃあないです、盲貫〈ですね。 そばを通る私を見かけまして、その子が『取ってくれ』って泣くんですが、 学生さんが『取っちゃだめだ』と言われたんです。 今考えてみると、出血多量を言ったのだと思いますが、 痛がるんですねえ。
痛がって抜いてくれと言うんですが、 『抜いたら死ぬからダメだ』と言われて、 もちろん私たちも逃げて行かなくちゃなりません。 |