天井からコンクリが落ちてくる、どげんしたらよかろうか、そして、 ひょっと見たら、一間ばっか先の方が火の海でございましたもんね。 そして、先生方も誰も、鞄〈は提〈げながら立ち往生しとんなさるでしょうが。 それから私も、逃げなきゃ、ここ逃げて行かなくちゃ、できないと思って、 こんなにしとったら死んでしまう、どうしようかと思いましてね。
こっちからは煙が来よる、こっちからは火が来よる。 地獄だろうかと思ってですね、『助けてください』て、 本当『助けてください、助けてください』ておめいたですけどもぉ、 誰一人、死にかかった、転んどる人ばっかりでしょう。
もう、わたしはもう、しかたなかと思ってこう寝とったら、 向こうの方から『何とかして這〈って来なさい』っておめきなさるとですよ。 本当ですね、何とかして逃げなくちゃ、 そらもう、自分だけなら死んでもよかばってん、 子供や主人がもし生きていたならね、可哀想〈やからって言うてですね。 『あなたの顔はお化けのごたる』て私に言うて、 自分もお化けのごとなってしとんなさったですもん。 カトリックの人だったから、今度は、自分の宗旨のお祈りでしょうか、 しよんなさった。 そーしてもう、泣いてみたり、笑ろうてみたりして… |