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証言172 | 8月9日 午後 | 今でもあの子に何とか水を | 当時27歳 |
とにかく、死の行進と言いますか、
もう、頭はちぎれたり真っ裸であったり、
真っ黒になった人、とにかく、夢遊病者のような状態ですね。
それでもやっぱり逃げたいという心理でしょうね、
ゾロゾロ来よるんですね。そうかと思うと、動ききらんで
芋虫〈のようにゴロゴロしながら…。
いまでも私の目から離れんですが、若い娘の子やったですが、
真っ裸で、真っ黒に汚れ…、汚れというか…火傷〈しとると思いますけど。
『私は…、ウチは死ぬとよ、水ばくれんね、くれんね』言いよるもんあんた。
ほってんか(だけど)、水を、自分も手がふさがってどうもならんもんじゃけん。
水を飲ましてやりた(い)ねー思うけども、そいがでけんでですねぇ、
そのまま見捨てて帰りました、あの…、逃げたですけど…。
今でもあの子に何とかして水を飲ませてやりたかったなぁと思います。