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沢山の負傷者が来るわけですね。
みんな、腰に紐〈一本だけを巻いているんです。
着物が全部吹き飛ばされてる、それで今度は夏ですから薄着〈。
そうしますと今度は、着物ばかりじゃのうして皮が吹き飛ばされているんです。
皮が吹き飛ばされて、切れずにぶら下がって、
丁度〈、風呂敷をぶら下げたように、皮がぶらぶら下がっているんですね。
それを引きずるように歩いて来よる、皆裸足です。
『熱か熱か、どこまで行っても熱か』。
というのは、その人達は、もう裸足で焼け土の上を歩いているから、
皮は焼けてなくなっている。肉で歩いてるんです。
だから、痛いのも熱いのもわからないような状態ですね。
その脇〈の道路には、たくさん南に向かって倒れて死んでいる訳〈ですね。
その人達は、歩き続けて焼け足で腹ばうようにして来た人もおります。
そうすっと、その人達死んでるけどね、
その人達の魂〈はやっぱり南に向かって、
歩き続けていると思っているんですよね。