そしたら、男の40代ぐらいの方でしたかねぇ、 座って私たちに、こう拝むんですよ。 どうしたんだろうと思ったら、 『お願いです。この家の下に、家内〈と子供と、 5人が下敷きになっているから この屋根を持ち上げてくれませんか』って言うんですよ。
で、みんなキズだらけでしょ。逃げていく者全てがね。 で、もう一応私も握りました。あの、屋根の端の方をね 握ったけど、皆、もう身体は血だらけだから、みな怪我〈してるから、 もうそれに、同情はできなかったんでしょうね。 下敷きになっている屋根の上をどんどん逃げていくんですよね。
私も可哀想〈で可哀想〈で、その男の方が手を合わせて、泣いて、 『これを持ち上げてください、持ち上げてください』って言うんだけど、 誰一人、逃げるのが精一杯だったんで。 いつ自分たちが、敵機が来てやられるかと不安で、 私もね、一番最後になって一人になったんですよ。 なんとか手伝おうと、こうしたけど、持ち上げられなかったから 『ごめんなさい』と先の方に進んだんですけど、それが未だに… |