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証言164 | 8月9日 正午頃 | 背中がないんですよ、えぐり取られて | 当時14歳 |
そして抜け出たんですけど、方角が全く分からないわけです。
今まであった建物というのが、全く全滅しているでしょ。
それといっしょに、九大(九州大学)の生徒ですけどね、
『どっか怪我〈してませんか』と言うんですよ。
その人は、私が怪我〈してるのを
気遣ってくれてる訳〈じゃないんですよね。
自分が怪我〈してるのを、
どこか怪我〈してないか見てくれという意味なんですよね。
見たら、表面、白いワイシャツ着てて、
その、全く怪我〈してないんですよ。
それで、『いいえ』と言ったら安心して、
くるっと後換えって向こう(へ)走っていったんですよ。
それを見てびっくりしたんです。
背中がないんですよ、えぐり取られてですね。
もう男と女も全く区別はつかないし、
血塗〈れの人間がそいこそ右往左往〈してるでしょ。
それがこう、自分をみんなが追いかけて来ているというような、
夢の中で、こう、追われるようなですね。
ところが、機銃掃射〈するんですよ。もうですね、5mも行けないんですね。
そしてこう、あれ戦闘機ですかね、目が見えるんですよ。
アメリカ兵独特の目が、窪〈んだ目が見えるのか、サングラスかけてるのが、
あんな(に)見えるのか、もうせせら笑うようにですね、
もうすぐ下まで降りてくるんですね。
来たと思ったら、ぱっと次の防空壕〈まで、どうかして走って行こうとか、
思うんですけど、途中でやられてしまう。藁〈をもすがるでそこら辺にあったのに
バッと掴〈んで、この、しがみつくわけですね。後で気がついてみたら、
死体にしがみついていたりですね。