花の中に埋まって寝とったんですね、その時が、夢が。 それでもう気持ちよく寝とったのが、間もなくしてから、その、 『近藤くーん』ってその声がかすかに聞こえたのが憶えていますね。 そして、あらー誰か私の側に来てるねぇー、 じっとしててくれればいいのに、っていうようなね、 そんな風な気持ちだったんですね。
そして掘り出される時はもう、憶えていないんですね。 天井の梁かなんかしらに、身体が、こう二つ折れたように曲がって 下敷きになっとったらしいですね。そして助けられて、 またそのとき「ドカーン」と大きな音がしたんですね、 爆弾みたいな音が。
そしてみんなはもう、足が達者だから、 全部地下の防空壕〈に入ってしまって、私一人だけ残ったんですよ。 誰も入れてくれる人がなくて。それで、あの、もうどうしようか、 もう、自分助からん、これで最期〈やろうって言うて、 もう一生懸命〈、泣くにも泣けんしですね。
様子をうかがっておった訳〈ですね。 もう、周囲を見ると真っ赤に染まって燃えていたんですね。 それを見て、助からん…、最期〈、自分はこれで最期〈やろう、 という気持ちで、半分諦〈めてたんですね。 そんなして、一生懸命〈、『助けてくれー、 助けてくださーい』っておめきよる所に、 布団〈をひっ被〈って、誰か、男の方だったんですね、被〈って来てから、 私に被〈せてくれたんですね。その時… |