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証言149 | 8月9日 直後 | 目をつぶる時間もない | 当時35歳 |
『なんかねありゃ』、光線と爆風と一緒に入って来たっじゃが、何だろう。
とにかく、ここは穴の中やから、まあ危険なことないだろうと。
ちょうど坂本町〈の外人墓地の下に横穴を掘っとったですからね、
『とにかく出てみようか』と、やっと身体が抜け出るくらい掘って
こーして見たところが、外はあんた、死人だらけでしょう、
みんな裸でですなぁ。
『おーい、こりゃ大ごとぞ、とにかく早よ出ろ』って。
出てですね、それで見たところ、触ると皮はべらっと、
目は開けたまま、目をつぶる時間もないわけですね。
息の切れるまでに…。目を全部開けたままですよ。
その穴を出てからですね、死人を、片手拝〈みですよ
千手……じゃないけども、
こらえてくださいって。涙が出るんですよ、ねえ伊藤さん。
当時を思えば、涙が出るんですよ、
本当に、死んだ人を踏まんと歩かれんやったっですよ。
こらえてくださいよって踏み超えて、走ったっです。
その間、もう、まだ息のある人はですね、
女じゃろう、男、もう容相〈分〈からん訳〈ですよ。
燃えっしもうて、血を浴〈びてもう、
その形相〈『助けてくれー』とおめきよるとをですね、
そらどうもされん、その時の情〈けなさですね、どうもしいきれんとですよ。
本当情〈けなかったです。もう生き地獄ってあれのことでしょうね。