原子爆弾症の第一期症状ちゅうのは、とにかく出血ですね。 一番最初に出血するのが、腸から出血した下血〈です。 だから、軍の方では、まず第一番に、今までの医学の常識として 赤痢〈を疑って、赤痢〈だからすぐ江波〈分院へ送れと、 江波〈は伝染病棟だから江波〈へ送れ、と言って送ってきました。
だけどね、疑問に思ったのが、そのー、そういう患者が来て、 肝臓〈も腫〈れてますが、脾臓〈が腫〈れてきとるんですね、みんな。 そして、黄疸〈を起こして来るんです。今までの経過と違う訳〈です、 赤痢〈の経過と違う訳〈ですね、脾臓〈が腫〈れたり、肝臓〈腫〈れたり、黄疸〈が出て。 そして、バタバタ死んでいくでしょう。どんな処置をしても死んでいくわけ。
だから疑問に思って、白血球数調べてみようちゅうて、調べたわけですね。 白血球調べたところが、その白血球がほとんどゼロに近いんですね。 その時にたまたま、京大の放射線科におった、ヤナギという軍医〈、 軍医〈少尉が、おりました。『ひょっとしたらなあ、こりゃ放射能かも分〈からんよ、 レントゲンの障害〈によって白血球が減るけれども』。 そこで初めて特殊爆弾、しかも放射能性の爆弾じゃあないかということが、 我々、うすうす感じました。 |