最初はですね、手袋を大体だいたい2枚から3枚軍手をしてですね、
そしてまあ手鈎てかぎのようなとを作ってですね、
水死者のそのバンドならバンドをですね、
その手鈎てかぎに引っ掛けてこう、岸に寄してげよったわけですね。
ほいだらそれは皆もう、二日目になるとですね、
手袋するのもせからしい(面倒くさい)というとこで、もう素手すでですよね。

素手すででその、こう抱きかかえるごとしてげたり、
もうちょっと手が届かんからと思うて、
女の方なんか髪の毛がこう乱れとう(る)でしょ。
髪の毛を持ってからこう引きずるわけですね。
そうすりゃ髪の毛がずるっとこう抜けるしですね。
手を持てば手の皮がブリっとけるしですね。
ちょうど手袋はずすごとですね。

ちょっと手鈎てかぎなんかがもうちょっと深く入るでしょ、
するとちょうど人間の肉がその、
今で言うたら、ま、一番かりやすいのは明太子めんたいこですね。
明太子めんたいこの身を見ようごとあのぶつぶつがいっぱい
こう重なったごとあってですね。
そいけんあんまり私も、
明太子めんたいこは今でもあんまり食べようごと(食べたくは)ないです。

大体だいたい何歳ぐらいの、まあ女なら女と、いうことだけ書いてですね、
どこどこ地区で収容しゅうようと。その、もう焼けてしもうた跡やからですね、
その、町の名前もはっきりせんわけですよね。
『ああ、これは何町ぐらいやったな』ぐらいのことでですな、
それで結局大体だいたい報告しといて、それで…

原爆の図「水」より (部分)(丸木位里・丸木俊 作/原爆の図 丸木美術館 蔵) 被爆者の絵・川中の死体をトビ口でひき上げる(小野勝 作/広島平和記念資料館 提供) 被爆者の絵・川中の死体を引揚げ火葬する(岡崎秀彦 作/広島平和記念資料館 提供) 

HOME