それも完全に焼けないんですね、やっぱり。 頭が残ったり、胴体が残ったりね。 ええ、それを今度はね、鳶口一丁持ってね、 この、死体をこう焼けるようにこう、歩くんですね。
死体のね、あの、この、金の入れ歯があるんですね。それをあの、 プライヤーかヤットコ(どちらもペンチ状の工具)っていって、 あのこう、持つようなのあるね、あれを持ってね、 死体から金歯を抜きに来るんですね。 それから、死体にかけてある毛布ですね、 その毛布も無くなっちゃうんですね。夜陰に乗じて盗〈りに来るんですね。
ところが向こうも、盗〈りに来る者も必死だからね、 その連中が捨て身になって来るんですからね、彼らは。 その、死んだ人よりもね、生きてる人が怖いんですよ。 死んだ人は何も暴れもしないしね。 別に何でもないの。生きてる人が怖いんですね。
その毛布もね、もう腐乱〈した死体だもんだから、毛布についてるね、 肉片とかなにかってダラダラ付いてるんですね。 それをそのまま構わず持ってくんだね。 捕まえてね、みると、お爺さんでしょ、 で、『お爺さんこの毛布あんた持っていってどうする』って言ったらね、 『まあ、これね、実は、もう生まれたばかりの子供がね、何も何もないから』… |