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証言113 | 8月10日頃 | つり銭がどうじゃこうじゃ言わずに | 当時44歳 |
8月10日から「県繊」(?)に出社して、被災者に被服〈を配給を始めました。
もう7時ごろから300人ぐらいの人が並んでおられます。
それも現在では、見ようといっても見られん、半裸体〈に等しい人が、
並んでおられるんでございます。
『どうして早く来て配給してくれんのか』って責められるんです。
中に、今に私の胸について離れんのは、60歳くらいの紳士が、
破れた軍服を着て、10円札を一枚持って、
『つり銭が無い、これがたった一枚で6人家内(家族)がこの、
白島〈まで逃げてきて、今、トタンで屋根をして、あとの5人は、
早う帰ってやらんと、いつ死ぬるやら分〈からん。
哀れな状態にあるんじゃから、
どうか、この、つり銭がどうじゃこうじゃ言わずに、
配給してくれよ』と、かように申されます…ので、
『はいよろしゅうございます』って、皆さんに内緒で…