で、その橋の傍にちょっと広場がある。 そこんとこへ5〜60人か、6〜70人ぐらい、 ずらーっとほとんど女の人だ。 みんなもうそりゃあ、皮は剥〈げたようになってるわ、もう、 形相〈もなにも分〈からないよね。 黒っこげてるようなのもあれば、それがずらっと並べてある。
ね、それがですね、その、炎天下〈にさらされてるでしょ。 そりゃ、人間…あんた…が発酵〈するから、ぶうっと膨〈れたようになって、 それで、皮膚の皮の弱いとこから、内部のガスが、ぶつぶつぶつぶつぶつ、 ぶつぶつぶつぶつぶつ…いうような、 ぷつぷつぷつぷつぷついうような音を立てて、出してる。 誰もいない、僕一人ですよ、そこへ立って見てるのは。うん。
それで家内〈がいやしないかなとこう見てるの。 で『これじゃあないかな』と思ったって確認できないわけなんだ。 まるで変わってるから分〈からないんだ、うん。 で衣類があれだったら『ああ、これだ』と思うんだけれども、 衣類いうものはほとんど焼けとるんだから。 これがねえ、実に人間の奇妙〈な心理ですねえ。 探すべく回っておりながら、実際はそういうその他の 死骸〈のような状態のものを見るに忍びないと… |