中へ巡察じゅんさつで入って行きますとね、『兵隊さぁんー、
水をくださいよ、熱いですよ。水をくださいよ』つって、
一斉に言うんですよ。
靴の音が聞こえるとね、みんなもうくるしいもんだから、
とにかく『水、水』って言葉ね、みんなさけぶんですよ。
でね、水をやりたくってもね、もう、『水をあの飲むとね、
もう死んじゃうんだからね、水は絶対やらないよ』って言うんですよね。

だけどももうその、焼けただれてる人達はなんかもう、
たまらなくもう喉渇のどかわいちゃうわけですよ。
だからもう、『水をくれ、水をくれ』。
ただ『水くれ、水くれ』だけでもう、亡くなって行きましたね。
今になって考えてみりゃ、あの時水をうんとたらふくね、思う存分にね、
んでいって飲ましてやればよかったなというようなことをね…

原爆ドームのある焼け跡(林重男 撮影/広島平和記念資料館 提供) 日本銀行広島支店の廃墟(現地プレートより) 中国配電株式会社の廃墟(現地プレートより) 

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