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証言107 | 8月15日の前 | あの時水をうんとたらふくね | 当時24歳 |
中へ巡察で入って行きますとね、『兵隊さぁんー、
水をくださいよ、熱いですよ。水をくださいよ』つって、
一斉に言うんですよ。
靴の音が聞こえるとね、みんなもう苦〈しいもんだから、
とにかく『水、水』って言葉ね、みんな叫〈ぶんですよ。
でね、水をやりたくってもね、もう、『水をあの飲むとね、
もう死んじゃうんだからね、水は絶対やらないよ』って言うんですよね。
だけどももうその、焼け爛〈れてる人達はなんかもう、
たまらなくもう喉渇〈いちゃうわけですよ。
だからもう、『水をくれ、水をくれ』。
ただ『水くれ、水くれ』だけでもう、亡くなって行きましたね。
今になって考えてみりゃ、あの時水をうんとたらふくね、思う存分にね、
汲〈んでいって飲ましてやればよかったなというようなことをね…