まず第一に驚いたことは、もうその市内の悲惨ひさんな事ですね。
地獄の様相ようそうは全くこれだなと思いましたね。
赤く焼けただれて、そしてもうここらずーっとその真っ赤になってるんです。
出たところは。ええ、顔と言わず、手と言わず、足も、
けになって血が滲んでおりましてね。
それがずーっともう、その動けない人達を収容しゅうようしてですね、
そしてずうっと並べておるんです。
で、その下に倒れておる人がもう、動かれず、そして血まみれになって、
『水くれ、水くれ』と言うてさけぶんですね。

それから一つはこの、広島市内へ一歩足を踏み入れたら、
何とも言えない、異様いような匂いですね。くさっていく臭さですかね。
毒ガスの中におるのと一緒です。
そしてもう、いたるところで死体を焼いておるんです。
呉のあの大空襲くうしゅう悲惨ひさんな状態を知っておりますが、
広島のあれを見たときには、
『ああ…、呉は良かったな』と思いました。
原爆でのかって(なくって)良かった。

それ程悲惨ひさんな状態でした。これはもう筆にも口にも表せません。
現地を見たもんでないとわからん。地獄の有様ありさまとはこのことかという…

原爆ドームのある焼け跡(林重男 撮影/広島平和記念資料館 提供) 広島の焼け跡(ハーバード・F・オースチン・Jr 撮影/広島平和記念資料館 提供) 

この証言の関連ホームページ
呉戦災を記録する会(←ここがこのページのトップです)
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