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証言101 | 8月7日 | 米兵を、足蹴りにする叩きつける | 当時28歳 |
徒歩で広島を縦断して、そして帰ったわけですが、
えー、その道すがら見るこの惨状と言うものは、
まあ地獄図絵と申しますかですね、もう目を覆〈うものでありました。
焼け爛〈れたあの市電ですか、もう鉄骨だけがかろうじて残ってる中に、
もう身体は焼かれて、女性であるか男性であるか、
見極めもつかないと、もう骨のような、あの、骸骨〈のような、
ミイラのようなものがですね、その、えー、
鉄骨のこのスノコのような上にひっかかっているとか、
それから、あのー、陸軍病院の跡などは、鉄の寝台がずらっと並んだ上に、
これまた人間であるかなんであるかという、
その、死骸〈がですね、そのままになって、誰も手をつける余裕も、
あの、気持ちの余裕もまた何もなかった。
それで、米軍の兵士であることはもうはっきりしているんですが、
これが鎖〈で繋〈がれて、太い針金で、あの、身体を縛られて、
そのまた針金をあの、傍〈の電柱にがんじがらめに結び付けて、
逃げられないような状態にしてあるんですが、
これはもうあの原爆の下で火傷〈もなにもしていなかったんですが。
もう、呆然自失〈としてもう気力もなければ生きるものもない
もうほんとに魂〈の抜け殻〈のような人間が、ふらふらと生き残ったものが
かろうじてそのあたりを歩いておりますが、この戦争に対する人間の心が
ここまで鬼畜〈にまでなるのか、自分たちの同胞を失ったという怒りか、
報復か、もう道行く者がそれを足蹴〈りにする、
あるものでその米兵を叩〈きつけるという、
またこれも地獄図絵で、これが人間のすることであるかという
恐ろしさというものをその中の光景で自分は見たわけですが…