被爆者の声101

<body><a href="../index.html">HOME</a><br><table summary="証言095"><tr><td class="testi">証言095</td><td class="date">8月7日　朝</td><td class="i_midasi">下敷きになったまま焼け死んで</td><td class="age">当時50歳</td></tr></table><table summary="背景画像あり"><tr><td class="bg" background="../photo/img304.jpg"><div class="large">うちのとこ行って見ますとね。もう家が何もないでしょ。<br>えー、木だけ残ってると、<br>ほいでそこでしばらくぼんやりして立っとりますと、<br>えー、女の人が一人出てきましてね、<br>『お気の毒でした』とこう言うんですね。<br>『どういう風に気の毒だ』と、<br>『いや、小さい坊ちゃんが<ruby>駄目<rp>〈<rt>だめ<rp>〉</ruby>でした』とこう言う。<br>『そしたら、他のものはどうした』と『その上の坊ちゃんも<ruby>駄目<rp>〈<rt>だめ<rp>〉</ruby>でした』、<br>『そしたら娘は』つったら『お嬢さんも<ruby>駄目<rp>〈<rt>だめ<rp>〉</ruby>でした』、<br>『ほしたら<ruby>家内<rp>〈<rt>かない<rp>〉</ruby>は』といったら『奥さんも<ruby>駄目<rp>〈<rt>だめ<rp>〉</ruby>でした』。<br>結局ね、気の毒がって一辺に四人、<ruby>駄目<rp>〈<rt>だめ<rp>〉</ruby>でしたって言えないんですね。<br><br>ほいからそいじゃまた詳しく話してくださいといったら、<br>ちょうど私のうちが2階建てだったんだよね。<br>2階であったために風当たりがひどいもんだから、<br>それがもうすっかりひっくり返っちゃった。<br>そしてひっくり返ってちょうどうちの家族がその下敷きになったんですね。<br>そいで下敷きになって、えー、まだその時は死んでやしないもんですから、<br>『助けてくれ、助けてくれ』ちゅうてまあ、しきりに中で<ruby>合図<rp>〈<rt>あいず<rp>〉</ruby>をしよったと。<br>ほいからあの…<ruby>鍋<rp>〈<rt>なべ<rp>〉</ruby>の底を<ruby>叩<rp>〈<rt>たた<rp>〉</ruby>いたりなんかして、<br>『ここにおる、ここにおる』と言いおったと。<br>その声が聞こえたもんだからなんとかして<br>これを助けてあげたいと思ってするけども、<br>女の手にはどうにもならんと、そいであの近所の男の人を探し回ってですね、<br>『助けてあげてくれ』ちゅって頼んで回るけども、<br>一人も来てくれんちゅうんですよね。<br><br>ほんで来てくれないもんだからね、<br>みすみすその、えー、下敷きになったままほったらかしておったら、<br>火がずうっと回ってきましてね、火事になってしまって、<br>みんな下敷きになったまま焼け死んでしまったと…</div></td></tr></table></body>