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証言089 | 8月6日 夜 | 石垣へ寄っかかり、野宿 | 当時46歳 |
『潮が満ちて来るとそこに座ってたらね、
溺〈れてしまうから、上まで上がんなさいよ』言われたって、
どうにも足が一歩も立てないんです。
こんなことしてたら潮が満〈ちて来たらいかんと思いましたから、
ようやく這〈って上へ行きましてね。石垣があるんですよ。
その石垣へこうやって寄っかかったきり、
もう何が何やら分〈からなくなってしまいました。
それで一晩そこで野宿ですわね。
その間にどれだけの人が亡くなりましたか、周りで。
日が暮れて、火事で全部焼けましたから真っ暗でしょ。
ここら、私の寄っかかってる傍〈に可哀想〈な女の子がいらして。
この方も明け方に息引き取ったらしくて。『寒いよー、寒いよー』言ってね。
あー、一人でそこまで逃げていらしたんでしょうか。
そいから何人か川へドボンドボンと落っこちて亡くなられた。