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証言082 | 8月6日 夕刻近く | ♪今こそ筆を投げ捨てて | 当時44歳 |
造船所って南の端でございましょ。
だから怪我人が皆逃げて来てね、だんだん溜まるわけですよ。
それがまぁ、呻〈いておる。それから『水を水を』って言う声ね。
これは忘れられませんですよ。
そうするとね、『水をくれー』って言いますと
医者がまた大きな声で怒りよる。
『水飲むと死ぬぞ!』ち言うて一喝〈しよるですね。
まぁそれは誰にも『水を水を』と言う声が忘れられんと言いますけれども、
やっぱり耳に、今さっきのように残っておりますですね。
結局、特別に造船所から船を出してくれまして。
その時も学生は僕を担架に乗せてね、そして意気揚々〈。
まるで負傷した大将を担架に乗せて兵隊が帰るような具合の調子ですよね。
あの動員〈の歌、今こそ筆を投げ捨ててという。
『♪今こそ筆を投げ捨てて』っていう。あの歌ですね、あれを歌ってね。